と戯れたのである。何と細かい場面ではないか、これだけの特殊相がこの一首に盛られてゐるのである。凡庸の作家の企て及ぶ所でないことがこれで御分りであらう。

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人の世にまた無しといふそこばくの時の中なる君と己れと
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 貴方も私も未だ若いのですよ、若い時は人生に二度とないといふではありませんか、しかしその時は余り長くはありません、私達は今その貴重な時の中に起居してゐます、思ひの儘に振舞つて能率をあげませう。

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その下を三国へ上る人通ひ汗取りどもを乾す屋廊かな
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 法師温泉は川原に涌くのを其の儘囲つたもので、主屋は放れた小高い処に建てられて居り、其の間が長い廊でつながり、廊について三国街道が走つてゐる、廊には昨日三国へ上つた婦人客の汗取りがずらつと干してある、その下を三国を経て越後へ通ふ旅人が通るのである。これも山の温泉の特殊相である。

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恋人の逢ふが短き夜となりぬ茴香の花橘の花
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 橘が咲き茴香が咲き夏が来た、短い夜はいよいよ短くなつた、たまの逢
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