いが、この歌の様にやれば随分細かい温度の差まで相当明白に表現することが出来る。それ許りでない、涙の温度迄知れるといふ副産物さへあるのである。

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ある時のありのすさびも哀れなる物思ひとはなりにけるかな
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 今の歌の様でもない、昔からある詠み人知らずの名歌のやうな歌である。或はこれに似たものが多くの中には一首位あるかも知れない。なぜならこれほどの体験は誰にでもあることで、従つて一人位は歌つただらうと推定し得るからである。作者の歌としては寧ろ凡作に属するものであらうが、それにも拘らず、普遍的実相に触れた小さなクラシツクとして存在の価値はありさうである。

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雪ぞ降る人磨くべき要無きか越の平の白玉の山
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 雪の名所上越線湯沢の光景である。あとからあとから雲が降つて白玉の山はむやみに上へ許り高くなつてゆく。一体それで宜しいのか、形をととのへ白玉をして光あらしむるには折々磨いてやらねばならないのではないかと反問しそれによつて前景を彷彿させるのであるが、さういふ反問の出るのは同時にやむにやまれぬ芸術心の
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