離れて我れ未だ世事を思はず桜散り敷く
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熱海の藤原さんの別墅を尋ねた時の光景。満開の桜があまり見事なので荘を離れて百歩いまだ世事を思ふ暇さへなく桜吹雪に吹きまくられてしまつたといふのである。倶忘軒は亭の名であらう。又同じ桜花の光景が 断崖《きりぎし》に門《もん》あり桜を霞這ひ天上天下《てんじやうてんげ》知り難きかな とも歌はれてゐる。
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子等の衣皆新しく美くしき皐月一日花菖蒲咲く
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晶子さんは学者として論客として女性解放者として教育者として各方面に女らしくない大活動を転囘した人であつたが、その本質はやはり抒情詩人であつた。何よりの証拠はその衣装道楽である。女らしさと芸術家気質とが混合したものであらう。従つて少しでも余裕が出来れば御子さん方の衣類も新調されたであらう。従つて斯ういふ歌が出来るわけだ。子供達が新らしい著物を著る衣替への心持と花菖蒲の咲くメイデイの心持との快い共鳴と同時に母親としての満足もよくあらはれてゐる歌である。
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小室山黒髪の夜となりにけり雨は梅花の油なりけん
[#こ
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