やく親しむ気分にさへなつた。つまり疲労のお蔭で仲直りが出来たといふわけなのであらうか。

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五月の夜石舟にゐて思へらく湯の大神の縛《いましめ》を受く
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 石舟は石の湯舟でいはふねと読むのではないかと思ふが確かではない。五月といへば山の夜も寒くはない、外は暗い、外から若葉の匂ひがしみこむ様だ。渋い感触の石造の湯舟に浸つて目を閉ぢて居ると心気朦朧としてこの儘いつまでも浸つて居たい様な出るにも出られない様な心持になる、それは丁度湯の神の咒文で縛られて居る感じである。

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逢はましと思ひしものを紅人手一つ拾ひて帰りこしかな
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 鎌倉の様な処へ出養生に行つてゐる少女の歌である。逢へるだらうと思つた何時も逢ふ人に今日は逢へず、その代りに紅人手を一つ拾つて帰つてきたが、その物足りなさ。自分の知らぬ間に私はあの人を思ふ様になつてゐたのであらうかなど自問する場合であらう。

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峯々の胡粉の桜剥落に傾く渓の雨の朝かな
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 これも塩原の朝の小景。散り際の一重の深山桜
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