難い逞しさはどうであらう。諦めないといふことも斯くては侮り難い。東洋にもこんな異端者が居たのだと怪しむ心であらう。猶同じ時の蝉の歌に 山裾に汽車通ひ初めもろもろの蝉洗濯を初めけるかな といふのがあり之も蝉の声の描写としては第一級に位するものであらう。また夜に入つては もろともに引き助けつつこの山を越え行く虫の夜の声と聞く といふのがあり、よく昆虫と同化し共栖する作者の万有教的精神が記録されてゐる。
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恋人は現身後生|善悪《よしあし》も分たず知らず君をこそ頼め
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ひたすら思ふ一人にすがりついてひとり今生のみならず来世までも頼んで悔いざる一向《ひたむき》な心を歌つたもの。少し類型的であるとはいへ、しかし作者の日頃強く実感してゐる信仰であり信念であるものを其のまま正述したものであるから自ら力強さが籠つて居り、そこから歌の生命が生れて何の奇もないこの歌が捨て難いものになるのであらう。
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松山の奥に箱根の紫の山の浮べる秋の暁
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下足柄の海岸から即ち裏の方から松山の奥に箱根山を望見する秋の明方の
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