らう。野の百合はソロモン王の栄華を尻目にかける頑な心の持主である。

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なつかしき萩の山辺の白雲をおしろい取りて思ふ人かな
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 おしろいを解きながら、唯その白いといふ色の縁だけで、白雲の飛ぶ山の景色を思ひ浮べ得るほどの人は、それだけで既に立派な女詩人である。次にこの歌に同感し得るほどの女性なら歌人になれる。この歌の分らない人は一寸難しい。

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時は午路の上には日影散り畑の土には雛罌粟の散る
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 これは近代感覚を欠く人には一寸分るまい。ワン・ゴオクの向日葵に見るやうな強烈な白いほどの日光と真赤なひなげしの葩の交錯する画面で、色彩二重奏といふほどのもの。さうしてそれ以外の何物でもないから、古い歌の概念で臨んだのでは分りつこはない。

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花園は女の遊ぶ所とて我をまねばぬ一草もなし
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 これは松戸の園芸学校の花畑を歌つたものである。季節は虞美人草の咲く初夏のことであつた。百花繚爛目の覚める様な花畑の中に立つた作者が自分の女であることを喜びながら一々の花に会釈し廻る趣きである。

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君亡くて悲しと云ふを少し越え苦しと云はゞ人怪しまん
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 有島武郎さんの死を悼んだ歌。この両人の関係は前にも一度触れたが、晶子さんを十分に appreciate した多くない人の中で、恋人のやうな気持で近づいたのはこの人だけであつた。それだけ晶子さんには掛け替のない男友達であり、同時代人であつた。しかし如何にその死を悼む情が痛切であつても、それが同じ年頃の異性である場合、十分に心を抒べることが出来ない。それが「苦しい」のである。因にその時の挽歌を少し引かう。 書かぬ文字言はぬ言葉も相知れど如何すべきぞ住む世隔る しみじみとこの六月程物云はでやがて死別の苦に逢へるかな 信濃路の明星の湯に友待てば山風荒れて日の暮れし秋 我泣けど君が幻うち笑めり他界の人の云ひがひもなく から松の山を這ひたる亡き人の煙の末の心地する雨

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休みなく地震《なゐ》して秋の月明にあはれ燃ゆるか東京の街
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 大正十二年秋の関東大震災は今日から見れば大したことでもなかつたが、戦争以前の日本人には容
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