げ]
白き門死なん心の進むべき変に備へて固く閉すらん
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同じく鎌倉での作。海に出る白塗の門が固く閉ざされてゐる。死なうとする心が私にあつてその進行する方向はいふ迄もなくあの門である。そこで変に備へて決して開かないのである。「タンタジイルの死」などの思ひ出される感じである。
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天地の薄墨の色春来れば塵も余さず朱に変りゆく
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一陽来復の心持を色彩を以て現はせば、こんなものであらう。塵も余さずと云つて万有にしみ通る春の恩沢をあらはし、然らざれば平板に陥る処を脱出させた。
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古の匂ひ未来の香を放つ薬かがせよ我が胸迫る
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これも前に幾首か例のあつたやうに言葉の音楽であつて大した意味はない。唯朗々と読み上げて一関[#「一関」はママ]の感動を覚えればそれでよいのである。而してこの歌も既にクラシツクになつてゐる。
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霜月や恋の積るになぞらへて衣重ぬる夜となりしかな
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十一月になつては一枚一枚重ね著をする枚数が増えて行く、とんと年を重ねるにつれて恋の積るのに似てゐると、その頃五十二三でなほ若さの残つてゐた作者はさう感じたのである。序だからいふが、発句では「や、かな」を使はないことになつてゐるさうだ。それには十分な理由がある。然るにこの作者は若い時からお構ひなしに盛に使つてゐる。私はその多くの場合にやはり承服出来ないものがある。例へば 鎌倉や[#「や」に白丸傍点]み仏なれど釈迦牟尼は美男におはす夏木立かな[#「かな」に白丸傍点] の如き歌では如何にも耳ざはりである。然るにこの歌の場合に限つて少しも障らないのは如何いふわけであらうか。
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快き秋の日早く来たれかし飽ける男のその証《あかし》見ん
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早く気持のいい秋が来て欲しい。あの男は十分恋を満喫し、もう沢山だといつて寄りつかなくなつてしまつたが、果してそれが事実なら、秋になつたらその証拠があがることだらうから。私の見解では、満喫したと思つたのは暑さのせいで、私はあの男を満足させた覚えはない。それ故気持のよい秋が来たら、腹が急に減つて満腹感などはつひ忘れて必ずまた来るに違ひない。而して逆に満腹して居なかつた証
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