――梅の賀が東京会館で極めて盛大に行はれた時の歌で、草紙はいふ迄もなく源氏物語、二条の院は紫の上を斎く若い源氏の本拠。そこに咲いた紅梅の様に盛大であつたと喜ぶのであるが、その調べの高雅なこと賀歌として最上級のものである。
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心先づ衰へにけん形先づ衰へにけん知らねど悲し
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心が先に衰へれば心の顕現したものに外ならぬ形の従つて衰へるのは理の見易い所である。しかし反対に形が先に衰へても、それが鏡などで心に映れば心もそれに共感して衰へ出すであらう。私の場合はどちらであらうか。はずまなくなつた心が先か、落ち髪がして痩せの見える形が先か、それは分らない、しかし悲しいのはどちらも同じことである。
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梅に住む羅浮の仙女も見たりしと君を人云ふ何事ならん
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羅浮の仙女とは、隋の趙師雄の夢に現はれて共に酒を汲んだ淡粧素服の美人、梅花の精で、先生も若い時分には羅浮の仙女にも会はれたことだらうといふ話を人がして居るが何のことだらうととぼけた歌。之も前と同じ時の賛歌で同じく梅に因んでの諧謔である。めでたく六十にもなつたのだ、若い時があつたといふ証拠のやうなそれほどの事を今更誰が咎めませうといふ心であらうか。
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先に恋ひ先に衰へ先に死ぬ女の道に違はじとする
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女庭訓にあるやうな日本の婦道を歌つたものでも何でもない。私はかう思ふ。この頃しきりに髪が落ち目のふちに小皺が見え自分ながら急に衰へを感じ出したが、さてどうにもならないといふ時、自分に言つて聞かせる言ひ訳だらうと思ふがどうであらうか。
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秋寒し旅の女は炉になづみ甲斐の渓にて水晶の痩せ
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秋寒しは、文章なら水晶の痩せて秋寒しと最後に来る言葉である。これは昭和七年十月富士の精進湖畔の精進ホテルに山の秋を尋ねた時の作。富士山麓の十月は相当寒い。旅の女は炉辺が放れられない。しかし寒いのは旅の女許りではない、この甲州の寒さでは、水晶さへ鉱区の穴の中で痩せ細ることだらう。
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一端の布に包むを覚えけり米《よね》と白菜《しらな》と乾鮭《からさけ》を我
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世話女房になりきつた巾幗詩人の述懐であるが、流石に
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