人は灼かれて死ぬでせう
いづこの国も いづこの都市も ことごとく滅びるまで
悲惨はつづき繰り返すでせう
あはれみ給え あはれみ給え 破滅近き日の
その兆に満ち満てるクリスマスの夜のおもひを
碑銘
遠き日の石に刻み
砂に影おち
崩れ墜つ 天地のまなか
一輪の花の幻
風景
水のなかに火が燃え
夕靄のしめりのなかに火が燃え
枯木のなかに火が燃え
歩いてゆく星が一つ
悲歌
濠端の柳にはや緑さしぐみ
雨靄につつまれて頬笑む空の下
水ははつきりと たたずまひ
私のなかに悲歌をもとめる
すべての別離がさりげなく とりかはされ
すべての悲痛がさりげなく ぬぐはれ
祝福がまだ ほのぼのと向に見えてゐるやうに
私は歩み去らう 今こそ消え去つて行きたいのだ
透明のなかに 永遠のかなたに
底本:「日本の原爆文学1」ほるぷ出版
1983(昭和58)年8月1日初版第1刷発行
初出:『外食食堂のうた』については、「近代文学」
1949(昭和24)年10月号
他の8篇については、「原民喜詩集」細川書店
1951(昭和26)年
※詩の区切りの改行は2行アキに統一しました。
入力:ジェラスガイ
校正:砂場清隆
2002年7月20日作成
青空文庫作成ファイル:
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