のだつた。
 だが、今後も……。人類は戦争と戦争の谷間にみじめな生を営むのであらうか。原子爆弾の殺人光線もそれが直接彼の皮膚を灼かなければ、その意味が感覚できないのであらうか。そして、人間が人間を殺戮することに対する抗議ははたして無力に終るのであらうか。……僕にはよくわからないのだ。ただ一つだけ、明確にわかつてゐることがらは、あの広島の惨劇のなかに横はる塁々たる重傷者の、そのか弱い声の、それらの声が、等しく天にむかつて訴へてゐることが何であるかといふことだ。



底本:「日本の原爆文学1」ほるぷ出版
   1983(昭和58)年8月1日初版第一刷発行
初出:「近代文学」
   1948年9月号
入力:ジェラスガイ
校正:大野晋
2002年7月20日作成
青空文庫作成ファイル:
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