の前がはっきりしなかった。突然後から一台の流線型が音もなく光って来た。その車が背を見せた時、藤一郎は女を見た。若い綺麗な女がたった一人乗ってゐた。あ、あの女だ――と藤一郎は遽かに頬笑むと、夢中で追跡を試みた。光が遠のいて行くばかりで、呼吸が切れさうになった。その時背後から襲った光の洪水に藤一郎は絶望を感じた。次いで烈しい罵倒が彼の全身をガーンと打った。
底本:「普及版 原民喜全集第一巻」芳賀書店
1966(昭和41)年2月15日
入力:蒋龍
校正:小林繁雄
2009年6月18日作成
青空文庫作成ファイル:
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