の予防になったのかもしれないようだ。
私たちはその日の夕刻頃には、みんなもう精魂つきて、へとへとになっていた。私はオートミイルの缶をあけて、それを妹に焚かせて、みんなに一杯ずつ配らせた。すると次兄は、「ああ、こんなにおいしいものが世の中にあるのか」と長嘆息した。このミルクと砂糖の混っているオートミイルの缶は、用意のいい亡妻がずっと以前に買って非常用にとっておいた秘蔵の品である。この宝が衰えきった六人の人間を一とき慰めてくれたのである。
底本:「日本の原爆文学1」ほるぷ出版
1983(昭和58)年8月1日初版第一刷発行
入力:ジェラスガイ
校正:大野晋
2002年9月20日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全2ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
原 民喜 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング