オまう、お考えだった。すると人間山は不忠にも、陛下のお考えに反対し、その命令に従わなかった。罪のない人民の自由や生命は奪えません、と、こんなことを言うのであった。
 第三条
 ブレフスキュ国から講和の使節がやって来たとき、その使節は敵国の皇帝の使であることを知っていながら、人間山は、まるで叛逆者のように、これを助けたり慰めたりした。
 第四条
 人間山は近頃、ブレフスキュ国へ渡ろうとして航海の準備をしている。陛下はたゞ、口先で、ちょっと許可されただけなのだ。それをいゝことにして、彼は敵国の皇帝と会い、敵国を助けようと企んでいる。

 このほかにもまだあるのですが、主なところを今読みあげてみたのです。
 ところで、あなたの罪状について、この弾劾文をめぐって、何度も議論が行われたのですが、陛下は、あなたがこれまで立派な手柄をたてゝいられるので、まあ、大目にみて罪は軽くしてやれ、と言われるのです。しかし、大蔵大臣と提督の二人は、夜中にあなたの家に火をつけて、焼き殺してしまった方がいゝ、と、ひどいことを言うのです。それから、陸軍大将は、そのときには毒矢を持った二万の兵をひきいて、あなたの手や顔
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