轤黷スのです。」
宮内大臣の話が終ると、私は彼にこう言いました。
「どうか陛下にそう伝えてください。私はどんな骨折でもいといません。しかし、私は外国人ですから、政党の争いのことには立ち入りたくありません。が、外敵に対してなら、陛下とこの国を守るために、命がけで戦いましょう。」
5 大手柄
ブレフスキュ帝国というのは、リリパットの北東にあたる島で、この国とはわずかに八百ヤードの海峡で隔っています。私はまだ一度もその島を見たことはなかったのですが、こんどの話を聞いてからは、敵の船に見つけられるといけないので、そちら側の海岸へは、出て行かないように努めました。戦争になって以来、両国の人々は行き来してはいけないことになっており、船が港に出入りすることも皇帝の命令でとめられていたので、私のことは、敵側にはまだ知られていないはずです。
私は一つの計略を皇帝に申し上げました。
「なんでも斥候《せっこう》の報告では、敵の全艦隊は、順風を待って出動しようとして、今、港に錨《いかり》をおろしているそうですから、これを全部とっつかまえて御覧にいれましょう。」
そこで、私は水夫たちに、
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