ネいし、いくら呼んでみても、返事がないので、気狂のようになって探しまわっていたところでした。それで、今、園丁を見つけると、
「そんな犬飼っておくのがいけないのです。」
と、ひどく彼を叱りつけました。
これは面白かったとも、癪にさわったともいえることなのですが、私が一人で歩いていると、小鳥でさえ、私を怖がらないのです。まるで、人がいないときと同じように、私から一ヤードもないところを、平気で、虫や餌を探して、跳びまわっていました。あるときなど、一羽のつぐみ[#「つぐみ」に傍点]が、実にずう/\しいつぐみ[#「つぐみ」に傍点]で、私がグラムダルクリッチからもらった菓子を、ひょいと、私の手からさらって行ってしまいました。捕えてやろうとすると、相手はかえって私の方へ立ち向って来て、指を啄《つつ》こうとします。それで、私が指を引っ込めると、今度は、平気な顔で、虫やかたつむり[#「かたつむり」に傍点]をあさり歩いているのでした。
だが、ある日とう/\、私は太い棍棒を持ち出して、一羽の紅雀めがけて力一ぱい投げつけると、うまく命中して、相手は伸びてしまいました。でさっそく、首の根っ子をつかまえ、乳
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