A私が林檎の木蔭を歩いている隙をねらって、頭の上の木を揺さぶりだしました。たちまち、十あまりの林檎が頭の上に落ちかゝりましたが、これがまた酒樽ほどもある大きさなのです。かゞもうとするところへ、その一つが背中にあたり、私は前へのめってしまいました。しかし幸いに怪我はなかったのです。
ある日、グラムダルクリッチは、私を芝生の上におろして、ひとり遊ばしておき、自分は家庭教師と一しょに、少し離れたところを歩いていました。すると、にわかに猛烈な霰《あられ》が降ってきて、私はたちまち地面にたゝきつけられました。霰はまるでテニスの球でも投げつけるように、全身に打ち込んでくるのです。しかしやっと四這いになって、レモンの木蔭に這い込み、私は顔を伏せていました。だが、頭のてっぺんから、足の先まで、傷だらけになって、十日ばかりは外出もできなかったのです。
しかし、これは少しも驚くことではないのです。この国では、何もかも同じ割合に大きいのですから、霰粒一つでもヨーロッパの霰の千八百倍はあります。これは、私がわざわざ秤にかけて計ってみたのですから、たしかです。
しかし、もっと危険な事が、この庭園で起ったこ
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