黷轤フ人々が一しょになって、あなたを罪人にしようとして、弾劾文《だんがいぶん》を書きました。」
こゝまで彼の話を聞いていると、私はむしゃくしゃしてきたので、
「何だって、みんなは私を罪人にしようとするのか、私はそんなに……」
と言いかけました。
「まあ、黙って聞いていてください。」
と、彼は私を黙らせました。
「私はいつかあなたの御恩になったので、こんなことを打ち明けるのですが、もしかすると、そのために私まで罪になるかわかりません。が、それも覚悟でお知らせするのです。こゝに、その弾劾文の写しを手に入れていますから、今それを読みあげてみましょう。
人間山に対する弾劾文
第一条
カリン・デファー・プリューン陛下の御代に作られた法律によると、宮城の中で立小便をした者は、死刑にされることになっている。それなのに、人間山は皇后の御殿が火事のとき、火を消すことを口実にして、不埒《ふらち》千万にも、小水で宮殿の火を消しとめた。
第二条
人間山はブレフスキュ国の艦隊を引っ張って持って戻ったが、その後、陛下は残りの敵も全部捕えて来いと命令された。陛下はブレフスキュ国を征服して属国にしてしまう、お考えだった。すると人間山は不忠にも、陛下のお考えに反対し、その命令に従わなかった。罪のない人民の自由や生命は奪えません、と、こんなことを言うのであった。
第三条
ブレフスキュ国から講和の使節がやって来たとき、その使節は敵国の皇帝の使であることを知っていながら、人間山は、まるで叛逆者のように、これを助けたり慰めたりした。
第四条
人間山は近頃、ブレフスキュ国へ渡ろうとして航海の準備をしている。陛下はたゞ、口先で、ちょっと許可されただけなのだ。それをいゝことにして、彼は敵国の皇帝と会い、敵国を助けようと企んでいる。
このほかにもまだあるのですが、主なところを今読みあげてみたのです。
ところで、あなたの罪状について、この弾劾文をめぐって、何度も議論が行われたのですが、陛下は、あなたがこれまで立派な手柄をたてゝいられるので、まあ、大目にみて罪は軽くしてやれ、と言われるのです。しかし、大蔵大臣と提督の二人は、夜中にあなたの家に火をつけて、焼き殺してしまった方がいゝ、と、ひどいことを言うのです。それから、陸軍大将は、そのときには毒矢を持った二万の兵をひきいて、あなたの手や顔
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