に乗った。

(九月×日)
 又カフエーに逆もどり。めちゃくちゃに狂いたい気持ちだった。めちゃくちゃにひとがこいしい……。ああ私は何もかもなくなってしまった酔いどれ女でございます。叩きつけてふみたくって下さい。乞食と隣りあわせのような私だ。家もなければ古里も、そしてたった一人のお母さんをいつも泣かせている私である。誰やらが何とか云いましたって……、酒を飲むと鳥が群れて飛んで来ます。樹がざわざわ鳴っているような不安で落ちつけない私の心、ヘエ! 淋しいから床を蹴《け》って、心臓が唄います事に、凭《よ》りどころなきうすなさけ、ても味気ないお芙美さん……。誰かが、めちゃくちゃに酔っぱらった私の唇を盗んで行きました。声をたてて泣いている私の声、そっと眼を挙げると、女達の白い手が私の肩に鳥のように並んでいました。
「飲みすぎたのね、この人は感情家だから。」
 サガレンのお由さんが私のことを誰かに言っている。私は血の上《のぼ》るようなみっともなさを感じると、シャンと首をもたげて鏡を見に立って行った。私の顔が二重に写っている鏡の底に、私を睨《にら》んでいる男の大きい眼、私は旅から生きてかえった事がうれしくなっている。こんな甘いものだらけの世の中に、自分だけが真実らしく死んで見せる事は愚かな至りに御座候だ。継続だんごか! 芝居じみた眼をして、心あり気に睨んでいる男の顔の前で、私はおばけの真似でもしてみせてやりたいと思う。……どんな真実そうな顔をしていたって、酒場の男の感傷は生ビールよりはかないのですからね、私がたくさん酒を呑んだって帳場では喜んでいる、蛆虫メ!
「酔っぱらったからお先に寝さしてもらいます。」
 芙美子は強し。

(十月×日)
 秋風が吹く頃になりました。わたしはアイーダーを唄っています。
「ね! ゆみちゃん、私は、どうも赤ん坊が出来たらしいのよ、厭になっちまうわ……」
 沈黙《だま》って本を読んでいる私へ、光ちゃんが小さい声でこんな事を云った。誰もいないサロンの壁に、薔薇《ばら》の黄いろい花がよくにおっていた。
「幾月ぐらいなの?」
「さあ、三月ぐらいだとおもうけど……」
「どうしたのよ……」
「いま私んとこ子供なんか出来ると困るのよ……」
 二人はだまってしまった。おでんを食べに行った女達がぞろぞろかえって来る。
 私のいやな男が又やって来る。えてして芝居もどきな恰
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