っぷして眠んなさい、酔っぱらって仕様がないじゃないの……」
 私の蒲団は新聞で沢山なのですよ、私は蛆虫《うじむし》のような女ですからね、酔いだってさめてしまえばもとのもくあみ、一日がずるずると手から抜けて行くのですもの、早く私のカクメイでもおこさなくちゃなりません。

(六月×日)
 太宗寺で、女給達の健康診断がある日だ。雨の中を、お由さんと時ちゃんと三人で行った。古風な寺の廊下に、紅紫とりどりの疲れた女達が、背景と二重写しみたいに、そぐわないモダンさで群れている。一寸《ちょっと》した屏風《びょうぶ》がたててあるのだけれども、おえんま様も映画の赤い旗もみんなまる見えだ。上半身を晒《さら》して、店《たな》ざらしのお役人の前に、私達は口をあけたり胸を押されたりしている。匂いまで女給になりきってしまった私は、いまさら自分を振りかえって見返してみようにもみんな遠くに飛んでしまっている。お由さんは肺が悪いので、診てもらうのを厭がっていた。時ちゃんを待ちながら、寺の庭を見ているとねむの花が桃色に咲いて、旅の田舎の思い出がふっと浮んできた。
 夜、鼠花火を買って来て燃やす。
 チップ一円二十銭也。

(六月×日)
 昼、浴衣を一反買いたいと思って街に出てみると、肩の薄くなった男に出会う。争って別れた二人だけれども、偶然にこんなところで会うと、二人共|沈黙《だま》って笑ってしまう。あのひとは鰻《うなぎ》がたべたいと云う。二人で鰻丼《うなどん》をたべにはいる。何か心楽し。浴衣の金を皆もたせてやる。病人はいとしや。――母より小包み来る。私が鼻が悪いと云ってやったので、ガラガラに乾《ほ》してある煎《せん》じ薬と足袋と絞り木綿の腰巻を送って来た。カフエーに勤めているなんて云ってやろうものなら、どんなにか案じるお母さん、私は大きいお家の帳場をしていると嘘の手紙を書いて出した。

 夜。
 お君さんが私の処へたずねて来た。これから質屋に行くのだと云って大きい風呂敷包みを持っていた。
「こんな遠い処の質屋まで来るの?」
「前からのところなのよ。板橋の近所って、とても貸さないのよ……」
 相変らず一人で苦労をしているらしいお君さんに同情するなり。
「ね、よかったらお蕎麦《そば》でも食べて行かない、おごるわよ。」
「ううんいいのよ、一寸人が待っているから、又ね。」
「じゃア質屋まで一緒に行く、いいで
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