思わせぶりな言いかたにきこえてくる。本当はいい人なのだけれども、けちでしつこくて、する事が小さい事ばかり、私はこんなひとが一番嫌いだ。
「私は自分が小さいから、結婚するんだったら、大きい人と結婚するわ。」
いつもこう言ってあるのに、この人は毎日のように遊びに来る。さよなら! そう云ってかえって行くと、非常にすまない気持ちで、こんど会ったら優しい言葉をかけてあげようと思っていても、こうして会ってみると、シャツが目立って白いのなんかも、とてもしゃくだったりする。
「いつまでもお金が返せないで、本当にすまなく思っています。」
松田さんは酒にでも酔っているのか、わざとらしくつっぷして溜息《ためいき》をしていた。さくらあらいこの部屋へ行くのは厭《いや》だけれども、自分の好かない場違いの人の涙を見ている事が辛くなってきたので、そっとドアのそばへ行く。ああ十円と云う金が、こんなにも重苦しい涙を見なければならないのかしら、その十円がみんな、ミシン屋の小母さんのふところへはいっていて、私には素通りをして行っただけの十円だったのに……。セルロイド工場の事。自殺した千代さんの事。ミシン屋の二畳でむかえた貧しい正月の事。ああみんなすぎてしまった事だのに、小さな男の後姿を見ていると、同じような夢を見ている錯覚がおこる。
「今日は、どんなにしても話したい気持ちで来たんです。」
松田さんのふところには、剃刀《かみそり》のようなものが見えた。
「誰が悪いんです! 変なまねは止めて下さい。」
こんなところで、こんな好きでもない男に殺される事はたまらないと思った。私は私を捨てて行った島の男の事が、急に思い出されて来ると、こんなアパートの片隅で、私一人が辛い思いをしている事が切なかった。
「何もしません、これは自分に言いきかせるものなのです。死んでもいいつもりで話しに来たのです。」
ああ私はいつも、松田さんの優しい言葉には参ってしまう。
「どうにもならないんじゃありませんか、別れていても、いつ帰ってくるかも知れないひとがあるんですよ。それに私はとても変質者だから、駄目ですよ。お金も借りっぱなしで、とても苦しく思っていますが、四五日すれば何とかしますから……」
松田さんは立ちあがると、狂人のようにあわただしく梯子《はしご》段を降りて帰って行ってしまった。――夜更け、島の男の古い手紙を出して読ん
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