狐物語
林芙美子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)祖谷《いや》を

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(例)かん[#「かん」に傍点]
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 四國のある山の中に、おもしろい狐がすんでいました。
 いつも、ひとりで歩くことがすきでしたが、ある雨の日、いつものように餌をあさってぼつぼつ歩いていますと、男の子が四五人、がやがや話しながら山を下っていました。
 狐は、時々人間をみたことがあったし、人間は二本の足で立って歩いているので、狐は珍らしくて仕方がないのです。狐のおかあさんは、「人間のところへ行くとひどいめにあうから、人間のところへぜったいに近づいてはいけませんよ。」と、いつもいうのですけれど、狐は、人間の姿がおかしくて仕方がなかったし、第一、ひょろひょろと、立って歩いているのがおかしくてしかたがないのです。狐は子供たちのうしろからそっとついて行きました。
「このへんは六兵衞狐の出るところだぞ。」
 一人の子供がいいました。
「晝間から出ることはないだろう。」
 また一人の子供がいいました。
「晝間でも雨が降っているから出るかもしれん
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