ところかね。――どんなとどけをするのかね。」
「村役場へ行って、村長にちょっと顏をみせればいいのさ。おじさんの話次第では、宿屋もみつけてくれるかもしれないよ。」
「ほう、村長はやさしいのかね。」
「やさしい時なンてめったにないけれど、おだてのきく蛙村長だから、そのつもりで行けば何でもないよ。」
「いい景色の村だね。金持ぞろいが住んでいるみたいだね。」
「なアに、金なんてありゃアしないよ。みんな貧乏なのさ。おしゃべりが好きだから、仕事なんかしないで會議ばかりしているので、金なんかすこしもありゃアしないよ。」
 みみずはまぶしそうにお陽さまをみています。糸のような赤いみみずは、龜さんのおじさんにちょっとうまそうにみえました。みみずは龜さんがこわい眼をしたので、こいつはおっかないぞと、すぐまた石の下へもぐりこみました。
「何もしゃしないよ。わたしは旅のものだから惡いことはしない。安心して出ておいでよ。」
「いやアだよ。うまいことをいって、ぱくりと僕を食うつもりだろう。僕はねむいから失禮するよ。」
「まアまア、そんなことをいわないで出ておいでよ。」
 みみずはどうしても出て來ません。龜さんはタバコ入れをしまって、また荷物を首にくくりつけて、むっくり、むっくり、歩きはじめました。
 むっくり、むっくり、むっくり、いくら歩いても同じ道で、じりじりとお陽さまがてりつけるので龜さんはあつくてたまりません。早く水がのみたいと思いました。村の入口へさしかかると、蛙の市がたっていました。いろんな店が出ていました。ほしいものは一つもありません。むっくり、むっくり、市のなかを通りすぎてゆく龜さんをみて、蛙の子供や、蛙の男や女がびっくりしてみちへあつまって來ました。
「役場へ行きたいのだが、どっちへ行ったらいいのかね。」
 龜さんが、きょろきょろしてたずねました。蛙たちは、みすぼらしい龜さんが、荷物を首にくくりつけて歩いてゆくのをみて笑い出しました。
「たいへんなものが來たよ。どっちから來たのかね。――おいおい、早く村じゅうへ戸じまりをよくして、一つでも、ものを盜まれないように用心するようふれてまわんなさい。」
 意地の惡るそうな蛙が大きい聲でいいました。子供たちは走っておうちへかえりました。誰も役場を教えてくれないので、龜さんは途方にくれてそこへつっ立っていました。そこへ子供のしらせで蛙の巡
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