ようなどす黒い肌であった。――藁《わら》の上から、親切な貰い手があれば一番いいのである。産み月近くには、二人ばかり貰い手の口もあったのだけれど、いざ生れて、猿っこのような赤ん坊を見せられると、二人の貰い手は、もっと器量のいい子供をと云うことになったのであろう。千穂子は日がたつにつれ気持ちが焦《あせ》って来た。このまま誰も貰い手がないとなると、与平との相談も、もう一度しなおさなくてはならないのだ。与平も、赤ん坊の片づく話を待っていたのだけれども、千穂子の顔色で、うまく話が乗ってゆかなかったと云うことをさとっていた。
「伊藤さんも、このごろ、少し、気が変って男の子がいいと云うのさ……」
私の子供は器量が悪いから駄目《だめ》だったのだとは云いづらかった。乳もよく出るのではあったけれども、どうせ手放す子供なら、早くした方がいいと云うので、生れるとすぐ乳は放してしまった。そのせいか、小さい躯は皺《しわ》だらけで、痩せた握《にぎ》りこぶしをふりあげている恰好《かっこう》は哀《あわ》れで見ていられなかった。親指を内側にして、しっかり握りこぶしをつくっているので、湯をつかわせる時には、握りこぶしのな
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