軍の兵隊さんが二人見に来ていました。
 一度ぜひこちらにもお出で下さい。
 このごろ、私は麦刈りに行きます。うちでも少し麦をつくっていますから、粉になったら少しですが持って行きます。シャツをもらったぼっちゃんお元気ですか。よろしくおっしゃって下さい。
 僕は八王子の子どもの手紙を読んで行きながら泣きたいようなかわいそうな気持になりました。金井君は「そのうち、学校が休みになったら行こうよ」といいました。
 朝の体操の時間、及川先生と僕たちはフットボールをしました。それから討論会です。
「おとうさんにお仕事のあるものは手をあげて‥‥」
 及川先生がいいました。僕はいきおひよく手をあげました。四十人の組のうち、手をあげないものが七人もいます。そのなかに、咲田という女の子がまじっていました。
「おかあさんがお仕事を持って働いているものは手をあげて‥‥」
 組のうち半分が手をあげました。
「学校へおべんとうを持って来るのはちょっと困るなというお家の声をきいた人は手をあげて‥‥」
 組のほとんどが手をあげたのでみんなわっと笑いました。及川先生も笑っています。
「どんなことをおっしゃっているの。金井
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