した。春になったから、頭の毛もはえるのかもしれません。それに、いわしをたべるせいかもしれません。おやつがすんで、僕たちはまた畑をしました。チョコはぬくぬくと畑のそばで日向ぼっこをしています。
「お前だな、畑あらしは……」
 金井君がにらみますと、チョコは、ねたなりでしっぽをゆらゆらふっています。僕はおかしくなって、チョコの前あしを一寸ふむまねをしました。チョコはざらざらした舌を出して、僕の靴さきをなめます。
「君、あのねえ、凍った山って、月夜にみるときれいだぜ。みたことはないだろう。僕たち山で、月夜に、B29[#「29」は縦中横]が、村の上をとおったんで、そっとそとに出てみたんだよ。白い山山に、B29[#「29」は縦中横]のサクン サクン サクンっていう、エンジンの音がはんしゃしてとてもきれいだったよ。星がいっぱい光ってて夜の凍っている山ってすごいよ」金井君が思い出したようにいいました。
 凍った山ってどんなだろうと思います。僕はみみずをほじくり出したので、しばらくみつめていました。のの字になったり、Sの字になったりしてさかんに運動します。泥まみれのみみずは汗ばんでいるようです。
 金
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