の個所は耳に入れてないのではないかと、長庵め、愚考《ぐこう》いたしまするでござりまする」
賢《かしこ》そうに言っている。山城守は、一|応《おう》もっともというようにうなずいたのち、
「じゃが、琴二郎が知れば、あによめに話しそうなものじゃのう」
「そこがそれ、兄から固く止められておりますことで――」
「そうか。なるほどそうも考えられるのう」
「園絵様も琴二郎様も、お二人とも、もうおしらべがついて、お屋敷《やしき》へお下げになったのでござりますな」
「うむ。いくら詮議しても甲斐《かい》がないから、一応下げたのじゃ。下げておいて、それとなく厳重に眼をつけておる」
「それが一番の御|処置《しょち》でござります。では、わたくしめは琴二郎様のほうを受け持って、専心《せんしん》に眼を光らせますでござりますから、伊豆伍と筆屋のほうは、何分ともにどうぞよろしくおとり扱いを願いまする」
「ああそれは、さっき申した通り、充分に考えてはおくが、そう右から左と急には参らぬ」
何のことか、山城守と町医長庵、しきりに話しこんでいる。
二
棟上《むねあ》げの式も一|段落《だんらく》ついて、出入り
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