わねばならぬ。
 で、山城守は長庵をやきもち坂の屋敷へ呼んで、程よく膝を曲げて頼みこんでみると、長庵の曰く。
「へへへ、お安い御用でございます。さっそくその、園絵さんとやらを旨アく誘《おび》き出《だ》して、何でございましょう殿様、その、芝の源助町の、納豆《なっとう》、じゃアない、ヤットウの先生の神保造酒、無形一刀流の町道場、そこへ引っぱって行けあよろしいんで。なアに、御安心なさいませ。この長庵めが、一度ズンと呑みこんだ日にゃあ、へへへへへ、殿様のまえでございますが、ナニ、仕事のしぞこないということは、金輪際《こんりんざい》ございませんので。ところ――」
 と、そこは、ただでは動かない抜目《ぬけめ》のない長庵が、変に口をモゴモゴさせて何かお礼のことを仄《ほの》めかしそうだから、山城守は先手を打つ気で、
「わかっておる。わかっておるぞ。其方《そのほう》からも前まえ頼まれておる筆幸《ふでこう》油御用《あぶらごよう》の一件ナ、あれを一つ、この機会に心配してやろう。そこは余が奔走《ほんそう》して、見事にまとめて見せるから、その代り、園絵を神保へつかわすことは、そちの働き一つじゃ。よろしく頼む」

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