くにおると? オイ左膳殿! オーイ、丹下……!」
なつかしそうな声でよばわりながら、ガサガサと草を分けて、こっちへ来る気配。
八
道しるべの立っている四つの角――丹波にとっては、知らず、生命の辻。
腰から上を穂すすきの波に浮かべて、ぬっと街道へたち現われた丹下左膳を見るが早いか、
「三方子|川尻《かわじり》の、漁師六兵衛の住居《すまい》以来だったナア」
ニタっと笑って、そうつぶやいた伊賀の暴れん坊、いきなり、右の肩がグイとあがって、白い棒のような光が、細い鏡のごとく陽に光ったと思うと……抜いたのだ。斬りつけたのだ。
居合抜き……。
「アッ痛《つ》ウ――!」
ざッくり横腹を割りつけられてうめきながらよろめいたのは、ほかでもない……峰丹波。
「ナ、何をする! これ、源三郎殿、何をなさるる!」
腕の相違というものは、いたしかたがない。
足《そく》もひらかず、からだも動かさずに、突如、刀で指さすように横にはらった源三郎の剣を、峰丹波、受けるには受けた。が、胴ッ腹で受けた。これじゃア受けたことにならない。
与吉は、すでに逃げ腰、左膳につづいて草むらからあらわれた櫛巻お藤をはじめ、源三郎手付きの若侍三人、萩乃などあっけにとられているなかで、伊賀の暴れん坊の凜《りん》たる声。
「いつぞやおあずかりのままの真剣勝負だ。貴公よりもおれよりも、剣腕の上の者が、判定に立ちあうのでなければ勝負はせんと、言いはったが、いまここへ、丹下左膳というあつらえむきの立会人が出て来たからな」
「おのれッ!」
刻々に細る息であえぎながら、丹波の指先は虫のようにおののいて、いたずらに帯刀の柄《つか》をはうが、もう抜く気力もないところを!
「…………」
無声の声、無音の音。恐ろしい気合いで、源三郎の振りおろした二の太刀に。
あわれ丹波! 胴首ところを二つにして、街道の砂塵にまみれた血糊《ちのり》の首が、ガッと小石を噛んだ。秋草に飛ぶ赤黒い血。
「とは言うものの――」
と伊賀の暴れん坊は、大あくびをかみしめながら、さし出した血刀を部下の一人に、懐紙一|帖《じょう》ですっとぬぐわせつつ、
「その丹下左膳が、おれより上の腕とは、まだきまらぬテ。まず伯仲《はくちゅう》であろうとは思うが、いずれその決着も、つく折りがあろう、ウフフフフ」
「くだらぬ者を斬ったな。それよりゃア
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