のねえ、かわいそうに」
と、お梶の手を取って、お美夜ちゃんもニッコリする。
そのお梶が、この二、三日、急に、めっきりふさぎこんでいるのは、
「こんなかあいいお美夜ちゃんと、お蓮様を、人柱などにして、生きながら壁のなかへ封じ込めてしまわなければならないのか――!」
と、親しみがますにつれ、あわれも深まったというのは、これは人情でそうあるべきところ。
この人柱のことは、いくら極秘にしても、微風のようなささやきが、造営奉行所をとりまくお作事部屋に、つぎからつぎと伝わって、諸職人のあいだには、もう誰知らぬ者もない。
この唖のお梶さえ、兄の手真似をりっぱに判断して、ちゃんと知っているくらい。
口のきけない者だから、秘密のもれる恐れは断じてなかろう……というので、選ばれてこの母娘《おやこ》の世話をすることになったのだが。
片輪だけに情が深く、やさしくされればひと一倍、恩にむくいたいという心のわくことには、係役人は気がつかなかったとみえる。
はじめお蓮様は、ションボリうなだれてばかりいるお梶を変に思って、頭を指さして顔をしかめてみせたり、お腹《なか》をかかえてうなるやら、いろいろやってきいてみたけれど。
いいえ! というように、首を振るばかり――頭痛でも腹痛でも、病気でもないという。
不憫《ふびん》な者だけに、ときどきこうして沈みこむのであろうと、お蓮様とお美夜ちゃんの二人は、ひとしおやさしくいたわる。
それがまたお梶の身には、火責めにされるよりもつらいので。
とうとうたまらなくなったお梶、ある夕方、突然、グッとお蓮様のたもとをおさえて……。
六
宵の口から、ポツリと落ちだした雨。
山の天気は変わりやすく、アレ! 雨かしら? と思ううちに、一山ゴウッととどろきわたって、大粒な水滴が、まるで小石のように縁先の笹《ささ》の葉をうち鳴らす。
沛然《はいぜん》。
それに雷《らい》さえも加わったものすごさに、お蓮様はあわててたちあがり、
「お美夜や、手を貸してちょうだい。お梶はあんなに、ふさぎこんでばかりいて、このごろは、笑い顔ひとつ見せない。かわいそうだから、使いだてるのも遠慮しましょう。いい子だからお母ちゃんといっしょに、この雨戸をしめましょう」
「ほんとに、お梶はどうしたの? 母ちゃん。今もお台所にすわって、こうやって泣いているわよ。
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