すセンチになるばかりじゃアねえか」
きめつけられた石金は、
「まあサ、おめえが来たから、おいらも安心したよ。ひとつ水いらずで、とっくりと納得させるがいいワサ」
言いすてて、家へはいる石金へ、
「何いってやんでエ」
と舌を出したチョビ安、
「サ、お美夜ちゃん、こんなところに立ってると、蚊に食われるよ。そんなに泣いてばかりいた日にゃア、黒瞳《くろめ》が流れてしまうぜ、ホラ、おいらを見ねえ……東西東西! 物真似名人、トンガリ長屋のチョビ安|太夫《だゆう》、ハッ! これは、横町の黒猫《くろ》が、魚辰《うおたつ》の盤台をねらって、抜き足差し足、忍び寄るところでござアい!」
ピョンとひとつとんぼ返りを打ったチョビ安、大道に四つんばいになって、泥棒猫のかっこうよろしく、おかしなようすでしきりにお美夜ちゃんの足もとをはいまわる。
お美夜ちゃんの悲しみをなぐさめようとの一心。
なんとかしてニッコリ笑わせようと、チョビ安一生懸命だ。
「サテ、おつぎはと――こけが刺子《さしこ》をさかさまに着て、火事へかけだすところ!」
自分で口上を言いながらの一人芝居だから、イヤそのいそがしいことといったら。
ゆかたの裾をスッポリ頭からかぶって、あわてふためいたしぐさでお美夜ちゃんのまわりを走りまわったが、
「オヤ! これでもまだ笑わねえナ。よし、それでは……と、アそうだ、こんどは、按摩《あんま》が犬にほえられて立ち往生の光景! ハッ!」
ポンと手をたたいたチョビ安、案山子《かかし》のような形にお美夜ちゃんの前につっ立ちながら、そっとうす眼をあけてうかがうと、お美夜ちゃんはそれを見もせずに、涙にぬれた眼をいぜんとして、北の空へ上げている。
「こんなに骨を折っても、どうしても笑わねえのかなア……ああくたびれちゃった」
チョビ安はべそをかかんばかり、ペチャンと往来にすわってしまった。
三
「だって、あたいがお父ちゃんのように思ってきた、あのお爺さんがすきなのは、当たりまえじゃないの」
とお美夜ちゃんは、やっと涙を拭いて、
「安さんだって、父ちゃんやお母ちゃんに会いたいって、いつもあの唄を歌うじゃないか」
そう言われると、今度はチョビ安がしょげる番。
だが、彼は、仔細らしく小首をひねって、
「そんなこと言ったって、おめえには、あのお蓮さんていう立派なおっ母が出てきた
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