に」
「埋没の個処を詳細紙面にしるし、これをこけ[#「こけ」に傍点]猿の壺中に封じあるものなり」
[#ここで字下げ終わり]
そのこけ猿の茶壺は、弟源三郎に持たせて、江戸へやってしまった!
対馬守は、大いにあわてて、紙を掴みとるなり、大書しました。
[#ここから2字下げ]
「うずめある場所は、宗匠御存じなきや」
「何人もこれを知らず。その地図は、こけ猿の茶壺に封じ込めあるをもって、茶壺をひらけ」[#この行は底本では天付き]
[#ここで字下げ終わり]
長い筆談に疲れたものか、宗匠はカラリと筆を投じて、不機嫌に横を向いてしまった。
六
大金をうずめてある個処を示した秘密の地図が、こけ猿の茶壺に封じてある――なんてことは、だれも知らないから、彼壺《あれ》はもうとうのむかしに、司馬道場に婿入りする源三郎の引出ものとして、江戸へ持たしてやってしまった!
あとの祭り……。
その黄金さえ掘り出せば、日光御修繕なんか毎年引き受けたってお茶の子サイサイ、柳生の里は貧乏どころか西国一はもちろん、ことによると海内《かいだい》無双の富裕な家になるやも知れない――。
「しまったっ」
と呻ったのは、対馬守です。主君から一伍一什《いちぶしじゅう》を聞いた高大之進《こうだいのしん》、大垣《おおがき》七|郎右衛門《ろうえもん》、寺門一馬《てらかどかずま》、駒井甚《こまいじん》三|郎《ろう》、喜田川頼母《きたがわたのも》の面々《めんめん》、口々に、
「惜しみてもあまりあること――」
「まだなんとか取りかえす途《みち》は……」
「イヤ、かのこけ猿の茶壺は、茶道から申して名物は名物に相違ござるまいが、門外不出と銘うって永代当家に伝わるべきものとしてあったのは、さような仔細ばなしござってか。道理で――」
「それを知らずに、源三郎様につけて差しあげたのは、近ごろ不覚千万!」
「迂濶《うかつ》のいたりと申して、殿すら御存じなかったのじゃから、だれの責任というのでもござらぬ。あの老いぼれの一風が、もうすこし早くお耳に入れればよいものを……」
「だが、かような問題が起こらねば、一風は死ぬ時まで、黙っておる所存であったというから――」
「おいっ! おのおの方、司馬道場への婿引出は、何もあの壺とは限らぬのだ。なんでもよいわけのもの。ただ、絶大の好意を示す方便として、御当家においてもっとも重
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