言って、泪の一ぱい溜まった眼で笑ったよ。いま泣いた烏《からす》が、もう笑った、ははははは。
合爾合《カルカ》姫 (いつしか全的に引き入れられて)烏といえば、いつか、妾の家の裏の丘へ、烏の巣を取りに行ったことを覚えてらしって?
成吉思汗《ジンギスカン》 烏の巣? いや、あれは雀の巣だよ。
合爾合《カルカ》姫 あら嫌だ。烏ですわ。あなたったら、烏を追っ払うんだっておっしゃって、お父様の弓を持ち出して――。
成吉思汗《ジンギスカン》 あ、そうだった。烏、烏――あん時あ、父親のやつにひどく怒られちゃってねえ。烏は、蒙古では神聖な鳥だからな。
合爾合《カルカ》姫 (すっかり追憶的に)あれから随分になりますわねえ――こんなこともありましたわ。覚えてらしって? そら、あなたが狩猟《かり》においでになって、弟の合撒児《カッサル》さまと御一緒に、妾の父の家へ水を飲みにお寄りになったことがありましたわね。
成吉思汗《ジンギスカン》 そんなことがあった? いつごろだったかしらん。
合爾合《カルカ》姫 あの、ほら、はじめて沙摩魯格土《サマルカンド》から、隊商の着いた年ですわ。
成吉思汗《ジンギスカン》 うむ、
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