なるを掲げたり。
下手奥に出入口が開き、青い月光の漲《みなぎ》る砂漠、および大河の一部がくっきり見える。寝台の傍に、獣油の燭台を一つ置く。その下に虎が寝そべっている。下手出入口よりの月光が一ぱいに射し込んで、舞台はほの明るい。幕開くと、合爾合《カルカ》姫が舞台中央に上手を向き、うな垂れて立っている。
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成吉思汗《ジンギスカン》 (その背後にぴたりと立っている。長い間。別人のように静かに)合爾合《カルカ》、ほんとに久しぶりだったねえ。君はちっとも変らない。
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姫の首筋をじっと見つめて、うしろから抱き竦《すく》めようとするが、はっと自らを制する。
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合爾合《カルカ》姫 (突如憤然と)あなたも、ちっともお変りになりませんわ。昔のとおりの、乱暴者の成吉思汗《ジンギスカン》――。(きっと振り返って)あなたは鬼です! 悪魔です! なぜその力自慢の腕で、いまここで妾《わたし》を、打って打って打ち殺してしまわないのです! (泣く)
成吉思汗
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