込まれ、酒宴は酣《たけなわ》になる。姫は暗然と俯向いたまま、なにひとつ口にしない。
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哲別《ジェベ》 お祝いのおしるしに、また一つには、姫のお心をお慰め申すために、わが陣中の狂乱楽をお聞きに入れたいと存じますが――。
成吉思汗《ジンギスカン》 思いつきだ。すぐ始めろ。
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銅製の長大な喇叭《ビウレ》、太鼓《ケンゲルゲ》、銅鑼《ハランガ》、法螺貝《ビシズンガル》、笛《ビシダル》、その他、ツァン、デンシク、ホレホ、ツェリニン等、珍奇な楽器を抱《かか》えた盛装の軍楽隊の一団が練り込んで来て、耳を聾する音楽が始まる。同時に、兵士ら五六人、赤、黄、紫などの小旗のついた、抜身の槍を振るって、成吉思汗《ジンギスカン》陣中の名物、槍躍りを踊る。成吉思汗《ジンギスカン》はその間、たえず淋しそうな微笑を浮かべ、ともすれば考え込むが、そのようすを人に覚られまいと、気がついたように合爾合《カルカ》姫へ笑いかける。姫は終始|首垂《うなだ》れて、一語も発しない。
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