りでも何でも、これが真心《ほんしん》でございますよ。きょうあの二百五十両の借りというひょん[#「ひょん」に傍点]なことから、三年ぶりにお前さまにお眼にかかって、お前さまはあの借りを帳消しにしてくださいましたし、わたしはお前さまが持って出た二千両を今あらためてさしあげましょうと申しているのでございますから、もう両方に何のいいぶんもないはずでございます。
 でございますから、どうかこのうえは、わたしに去り状をくださりませ。そのうえで、はっきり申し上げたいことがあるのでございます」
 お高は、いつのまにか真っ蒼な顔になっていた。

      六

「なに、三下り半をよこせってえのか」
「はい。さようでございます」
「読めた。そいつを取ったら、大いばりで、あの若松屋へ乗りこんで、めくら野郎といっしょになろうてんだろう」
「いいえ、そのまえに、お前さんから離縁状を取ったなら、お前さんにしてあげることがあるのでございます」
「おれにすること? 何をしようというのだ」
「離縁状さえ渡していただけば、もう妻でも良人でもないのでございますよ」
「それはそうだ。そのための離縁状だからな。で、妻でも良人でもなくなったら、おめえはおれに何をしようというのだ」
「お前さまが若松屋さまをおぶちになった数だけぶち返してあげるのでございます」
「ふうむ、てめえ、いよいよあの若松屋にまいっているな」
「そんなことはよけいなことでございますよ。どうでもよろしゅうございますよ」
「うんにゃ。よかあねえ」
「さあ早く去り状をお書きになってくださいませよ」
「書かねえ」
「え? お書きになってくださらないのでございますか」
「書かねえ、決して書かねえ。意地になっても書かねえからそう思え」
「意地になっても書いてくださらないとは、ずいぶんまたわけのわからないお話でございますねえ」
「わけがわかってもわからなくっても書かねえといったら書かねえのだ」
「それはいったいどういうお心からでございます。若松屋さまをおぶちになった数だけ、このわたしにぶたれるのが、そんなにこわいのでございますか」
「てめえを若松屋へくれてやるのがいやなのだ。といったところで、今までだって他人じゃああるめえが――」
「若松屋さんとわたしは、今までのことは今までのこととして、お前さまがわたしに去り状を一札書いてくだすって、若松屋さんをおぶち
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