良寛十郎という御家人がほんとのお高の父の相良寛十郎ではなくて、ほんとの父の相良寛十郎はまだ生きているらしいので、その実父が出てくると万事解決するといってみんなが、探しているということを、木場の甚から聞き出して、さまざまにあたまを悩ましたのだった。
というのは、お高は、名義のうえでは自分の妻ということになっているのだから、お高が、そんな大きな財産の所有主《もちぬし》になれば、磯五も、何だかんだと小切りにいたぶることもできそうなものなので、それが、だいぶきまりかけていて、たった父の一件だけ引っかかっているとすれば、磯五としても、まことに残念だったから、何とかしてその実父の相良寛十郎を探し出してお高に財産がくるようにしようといろいろ骨を折ったあげく、考えついたのが、偽物《にせもの》を仕立てることだった。
木場の甚をはじめ、その身内の若い者や、一空和尚が探しまわっているのだから、とても磯五が一人の手で探し当てることができるわけもなければ、またその方便もないのだった。
ところで、偽物を仕立てるといっても、木場の甚や一空和尚は、以前の相良寛十郎の顔を見知っているのででたらめのこともできない。そこで磯五は、何度も木場の甚のところへ通って、それとなく実の相良寛十郎の人相を聞いて、ふっと思い出したのが、むかし上方のほうを放浪していたときに、ちょっと出会ったことのある、日本一太郎という手妻使いの太夫である。
思い出してみると、他人の空似ということをいうが、木場の甚の話によって磯五の心にでき上がった相良寛十郎の面影とこの日本一太郎は、年恰好から顔つき物腰までそっくりだったので、あれならきっと木場の甚や一空和尚の首実検にあっても、何しろ長らく見ないことではあるし、きっと通ってお高の実父ということになりすまし、その結果、お高は難なく財産を受けつぐことになるであろうと、そこで、自分は幸い日本橋の大店《おおだな》の旦那と納まっていて、贔屓《ひいき》にする芸人や香具師も少なくないことだから、それからそれへとだんだん手をまわして調べると、その日本一太郎という手品師は、今、おりよく江戸に流れ込んで来ていて、両国の小屋に掛かっていると知れたので、さっそく出かけて行って一伍一什《いちぶしじゅう》を話し、底を割って頼み込むと、しばらく考えていた日本一太郎が、
「それじゃあ、あっしが、その柘植のお高、
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