具師《やし》のほうもやっている木場の甚てえ親分とな、ちょっくらほかのかかり合いで相識《しりあい》になったのだが、この仁《ひと》がいってすすめてくださるのだ。
おいらも、その先長えことではなし、一世一代に、手妻の一点張りで舞台《みせ》を張ってみてえ気もあってひとつ根限り、幻妖《げんよう》摩訶《まか》不思議てえところを腕によりをかけて見せてえ気もちも大きにあるのだが、ついては、新奇の演《だ》し物《もの》をつくって、思い出話にもなるように凝《こ》れるだけ凝って呼びものにしてえと思うのだ。手品といったところで生やさしいことでは客はつかねえよ。
そこで一つ考えてることがあって、それにあ女がひとりいるのだ。面と姿が人形のように美《よ》くて、それで色気がたんまりあろうてえ髱《たぼ》が一枚入り用なのだ。ちょうどおめえのような――」
話しているうちに、日本一太郎はだんだん興奮してきて、がくがくあせり出しながら、お駒の肘をとって揺すぶるようにするのだ。かみつかんばかりにことばをつないで、
「実あさっき、おれあおめえのからだを見るために、ああしていっしょに湯にへえったのだが、あれならどうして、振り事でも所作でも、融通のきくいいからだだ。上背はたっぷりあり、四肢《てあし》はすんなりと、おまけに、顔はそのとおりきれいだし、第一、そのおめえの身から、ほんのりにおってくる色気が大したものだよ。千両ものだよ」
日本一太郎はお駒ちゃんのはだかを想描するようにうっとりと眼をつぶって、唄《うた》うようにつづけるのだ。
「何にもむずかしいことはありゃあしねえ。おめえならすぐ覚えるのだ。ちょっと稽古《けいこ》すりゃあわけあねえよ。女を出して、どう持ってゆくかてえことは、ここんところ、おいらもまだ考えてる最中で、しかとは決まっていねえが、とにかくあっと見物の度胆を抜くものでなくちゃならねえ。
おいらも、日本一太郎として、一度は江戸中の評判にもなってみてえのだ。日本一太郎――全く、自慢じゃあねえが、おいらの手品はにっぽん一だと、まあ自分じゃあ思っているのだ」
「それはそうだろうけど」お駒ちゃんは、乗り気と不安をちゃんぽんにした眼で「あたしはいったい何をするのさ」
「新作|天羽衣《てんのはごろも》、天人娘《てんにんむすめ》夢浮橋《ゆめのうきはし》、外題《げだい》はまだ決めちゃあねえが――おめえか、おめえ
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