町に木場の甚をたずねた。そして、じぶんはお高の良人であると名乗って、それとなくすべてのことを聞き出したのだ。
柘植宗庵から娘のおゆうに譲られた莫大な財産が、いまお高のものになろうとしていること、おゆうの死後、良人の相良寛十郎とまた嬰児《あかご》だったお高の行動がはっきりしていないこと、ならびに深川の古石場で死んだ、お高の実父とばかり思いこんでいた相良寛十郎は、全く別人で、おゆうの夫、お高の父の相良寛十郎ではなかったことなどである。
木場の甚はお高が柘植家の当主であり、したがって、じぶんが預かってきている財産の受け取り人であることに、何らの疑いをはさんでいるのではなかったが、何しろ大きな額なので、奉行所のしらべに対しても、念には念を入れなければならないのだった。お高の出生や、ほんとの相良寛十郎のこと、偽の相良寛十郎のこと、それらをよく知っている者を探し出す必要があるのだった。
「わたしも、そう考えていたところです」
磯五がいうと、木場の甚は、あのお高が人妻であると前に聞いたことがあったかどうかと、忙しく考えながら、相槌《あいづち》を打った。
「そうですよ。お高さんが本人であることに違《ちげ》えはねえのです。わっしも、金剛寺の一空さまも、それはよくわかっているのですが、生きた証人がねえことには何も口をきくものがねえのです」
木場の甚は、磯五を慰めるような口調だ。磯五も、お高になり代わって、その証人の捜索を頼むようなことをいって、その日はそれで帰った。
磯五は、堀割りにそって、夕ぐれ近い熟した日光がぽかぽか当たっている深川の町をゆっくり歩きながら、からだ中の血が駈けまわるような気がした。あのお高が、とほうもない財産のあと取りになろうとしている、それは、この陽の光のように確かな事実なのだ。お高、じぶんの妻のお高は江戸で一、二の女分限者だったのだ。
すると磯五は、お高がもう自分の妻でなくなっていることに気がついて今度は、全身に血が凍るように感じた。あの縁切り状を書くのがもう一日おそければよかったのだ。何とかしなければならない。磯五は、なにかに追い立てられるように、せかせか歩き出していた。
三
お高は、雑司ヶ谷の雑賀屋の寮へ帰って来ていた。そのお高を見舞いに、若松屋惣七と、紙魚亭主人と歌子とが江戸から遊びに来ているのだ。
いつか、この一行に、大久
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