がした。深夜のように暗い顔になって、手紙をふところへ呑んだ。が久助は、手紙を落としたことに気がつくと、こっそりこの部屋へ探しに来るに相違ないのだ。そのとき、じぶんがすべて読んだことをさとらせてやろうと思って、磯五は、また手紙を取り出して、わざと広げたまま、その座敷へ置き放しにして廊下へ出た。
 それは、お駒ちゃんが、拝領町屋のほうへよこしたものらしいのだ。使い屋が持って来たのだろう――磯五は、そう考えて、それにしても、お駒と久助が父娘《おやこ》であろうとは! 全く世の中は、広いようで狭いものだと、感心と戦慄《せんりつ》をちゃんぽんにしたような心状で、いそがしく対応策をめぐらしながら縁側を歩いて行くと、むこうからおせい様が来るのに会ったのだ。
「お従妹さんはぐっすり眠《やす》んでいられますよ」おせい様は、にこにこして、先に立って、そばの座敷へはいって行ってすわった。磯五もつづいた。おせい様は年齢《とし》には見えないあどけない顔を上げて、磯五を見ていた。「お医者におみせしたら、だいぶからだが弱っているから、要心をしないとあぶないとおっしゃいましたよ」
 おせい様は、急に心配そうにいったが、磯五は、ほかのことを考えてるのだ。
「おせい様、わたしは久助の庖丁《ほうちょう》が大好きなのです。ねえ、おせい様、あいつを磯屋の料理人《いたば》によこしてくれませんかねえ」
「まあ、藪から棒に。でも、よろしゅうございますとも、そうなれば、久助も大喜びでございましょうよ」
「まだ本人にきいてはみないのですが――」
「ほんとに、お店のほうへおつれなさいましよ。そして」おせい様は、赧くなって、ためらった。「わたしたちがいっしょになるようなことになったら、また二人で使いましょうよ」
 磯五は、白い花が咲くようににっこりして、おせい様の手を取って膝のうえにもてあそんだ。
「わかりませんでしょうね、お内儀さんの行方は」
 おせい様が、いっていた。
 磯五は、ほっと溜息《ためいき》をついた。
「生きているというので、いろいろ捜してはいるのですが、皆目知れぬのですよ」
「お内儀さんはなくなったといい、生きていらっしゃるといい、どっちも人のうわさなのでございますからそれを確かめませんと、わたしたちは、晴れていっしょにはなれませんよねえ。困りましたねえ」
「困りました。ほんとに、こんなに困ったことはござい
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