《とし》になるまで、ただ柘植家の財産を守って、それをおゆう様のたった一人の娘てえ女《ひと》に引き渡してえばかりに、こうして行方をたずねて、生きてきたようなものでごぜえます」
 一空さまは、このごまかしものの多い世の中に、木場の甚の正直さを尊いものに思って、あらためて老人を見た。木場の甚は、いっていた。
「お話によると、私も見たことのある、あの古石場にいなすった娘さんが、わっしがこの年月捜してきたおゆう様の一粒種らしいが、もしそうなら、その娘さんこそは、日本一の果報者でございます」
「まあ、一度会うてみなされ。おゆうさんを知っていなさるなら、疑うどころの話ではない。おゆうさんに生き写しというてもよいから――さっき、にせ物が、柘植の娘じゃと名乗って、だいぶあちこちから出て来たというようなおことばであったが――」
「ああ。あっしが柘植の財産を預かって、引き継ぎ人を探していると聞いて、あちこちからさまざまのことをいい立てて、おゆう様の娘になりすましたやつが出てまいりました。なに、あっしはこの眼で、立ちどころに見破ってきたのです」
「柘植の財産というのは、大きなもののように、和泉屋の番頭も申しておったようだが――」
「和泉屋は、そのなかのほんの一つでございます。ほかにも地所家作をはじめ、いろいろございますですよ。それはそれは、大変な財産でございます。そこで何にも知らずにいて、これだけのものをごっそり手に入れる娘さんは、いくらもともと母から譲られた自分のものとはいえ、たしかに日本一の果報者に相違ねえと、あっしは申すので」
 なるほど、それに相違ないのだった。一空さまは、小石川の金剛寺坂に、若松屋の雇い人になっているお高の現在を思い出して、いったいどういうことばでこの吉報を伝えたものであろうかと、老《お》い胸がわくわくするのを覚えた。
 ただ、相良寛十郎のことが、どう考えても腑に落ちないのが、二人は気になってならないのだ。
 おゆうの良人としての相良寛十郎は、一空さまも木場の甚も識っているので、人相|風貌《ふうぼう》などを話し合ってみると、完全に一致するのである。こうなると、お高の父として死んでいった相良寛十郎は、お高の話で一空さまが考えたとおり、また木場の甚が現に眼で見たように、同名を名乗っていた別人であったということが確定されるのだ。
 何者が何のために換え玉になっていたので
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