いる人だった。若い女は、その許婚《いいなずけ》の女であった。ふたりは、きょうのことを聞いて、子供たちを遊ばせに来たのだった。男が横笛を吹いて、女が、それに合わせて優雅な踊りを踊ったりした。男が、若い者にかつがせて来た菓子包みを、子供たちに配った。
もう一人の中年の女の人は、やはり一空さまをあがめて、洗耳房に出入りして子供たちの世話をしている、お由《よし》さんという近所のおかみさんだった。お由さんは、しじゅうお高のそばにいて、赤い顔をしてはしゃぎ[#「はしゃぎ」に傍点]まわっている子供たちについて、何くれとなく話してくれた。
一空さまは、子供たちに取りまかれて、あっちからもこっちからも引っぱられて、にこにこ笑っていた。針のように細い眼がいっそうほそくなって、すっかり見えなくなっていた。
お高は、その、耳がわんわんする中で、さっき一空さまがいった、父や母のことを考えていた。母のおゆうが、とてつもない分限者であったというのが、どうしても腑に落ちなかった。それかといって、一空さまがふざけているとも思えなかった。人違いではなかろうかと思った。
母のことは、顔も思い出せないし、何一つ遺品《かたみ》のようなものも残っていないのだ。が、父の相良寛十郎のことは、まるできのうまで生きていた人のように、そっくり思い出すことができるのだ。お高が、その父親の思い出を心のうちにころがしていると、大声にいっている一空さまのことばが、聞こえた。
「この喜捨をしてくれた人は、旅に出ておられんから代わりに、その人にこの洗耳房のことを話してくれた姉さまをお連れした。今その姉さまから、何か話があるから――」
というのだ。一空さまは、笑って、お高を見た。子供たちも、大声をあげてよろこんで、お高のほうを見ている。お高は、どきまぎしたが、お由さんに促されて、にっこりしていい出した。
六
「皆さんのお友だちは、龍造寺主計様とおっしゃるおさむらい様でございます。お帰りになりましたら、皆さんがこんなによろこんだことを、すっかりお話し申しましょう。そして、一度おつれして、この立派なお部屋をごらんにいれましょう」
子供たちの歓声のなかで、お高は赧くなった。これで部屋びらきがすんで、仏具屋の二人も、お高に挨拶して帰って行った。お由さんがめんどうをみて、子供たちも、三々|伍々《ごご》洗耳房を出て行
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