から、道路で遊ばせておくことはできん」子供好きの一空さまは、子供のことをいうときだけは、眼を光らせていた。
「そこへおりよく龍造寺どのの喜捨があったので、洗耳房へ遊び場を建て増ししたわけじゃ。あの仁をわしのところへよこしたのは、あんただということじゃから、本人がここに出ておらんならあんたでもよい。ちょっと来て、餓鬼どもがよろこんどるところを見てやってくれんか。それはえらい騒ぎをやりおる」
お高は洗耳房の子供たちがあたらしい遊び部屋で自由にはねまわっているところを見たい気がした。無邪気な童子のむれに接すれば、こころもちが晴ればれしていいだろうと思った。
「お供させていただきます」
「そうか。すぐ来てくださるか。それはありがたい」
「ちょっと着がえを――」
「いや、そのままでよい」
「いえ、でも帯《おび》だけ――」
お高は帯を締めかえて出てくると、一空さまは何か考えて待っていたが、はいって来るお高をぼんやり見上げて、夢をみている人のような声できいた。
「あんたは柘植氏《つげうじ》を名乗っておらるるのではないかな。どうも似ておる」
二
お高は、びっくりした。
「はい、母方の姓を柘植と申しました。でも似ているとおっしゃいますのは、わたしがどなたかに似ているのでございますか。そういえば、和尚さまも、俗名を柘植様とおっしゃったそうでございますね」
一空さまは、お高の顔に、改めて眼を凝らしていた。何を考えているのか、その自分の考えていることが信じられないというようすだ。やがて、苦痛の色が、雲のように一空さまの額部《ひたい》を走った。それには、何かはかない思い出を暗示するものがあった。
お高は、へんに思った。一空さまのそばへ行ってすわった。
「どうなすったのでございます。一空さまは、うちの母をご存じでいらっしゃいますか。何かつながりに、なっていらっしゃるのでございますか」
一空さまの眼は、恐ろしいものを見てるようにさえ見えるのだ。一空さまが、きいた。
「お父うえのお名は、何といわれたかな」
「父は相良《さがら》と申しましてございます」
憎悪と恐怖のいろが、一空さまの表情《かお》のうえで一時に交錯したから、お高がいっそうぎょっとしていると、
「相良|寛十郎《かんじゅうろう》どのであろう。存じておる。深川の古石場《ふるいしば》にお住みだったな」
という一
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