りとで、濡れた碁石のようにつやつやしく光っていた。それは、お高の内側に、何か火が燃えているような感じだった。
若松屋惣七が帰ってから、歌子とお高は、奥の座敷にすわって、長いこと話しこんだ。お高の眼は、同性の歌子をさえ魅了する眼だった。お高が帰ることになったので、庭から出て柴折戸《しおりど》のところまで送って行きながら、歌子は、自分が、お高のその眼と、ころがるような澄んだ声とに、すっかり包まれているのを意識した。
お高を見送って、引っかえすとき、歌子はつぶやいていた。あの女は惣七様を想っている。それはわかるけれど、いっしょになれない事情というのは、何だろう? 夜っぴて歌子は、そのことを考えた。が、どうしても想像できなかった。
惣七さまに、ほかの女のことで引っかかりがあろうとは考えられない。あれほど思いあっているようすなのだから、はやく立派に夫婦になればいいのに、それがそうはゆかないというわけが、歌子にはどうしてもわからなかった。よく気をつけて、二人を見ていることにしよう。そう思った。
お高が金剛寺坂の家《うち》へ帰って来ると、若松屋惣七が起きて待っていた。
「ほう。ちょっと違った顔を見ただけでも、お前は顔いろがようなったぞ」はいって来たお高を見て、若松屋惣七がいった。「すこし出て、人に会うがいいのだ。この屋敷に、女というてはお前ひとりだから、女同士の細かい話もならず、それで気がふさぐのだ。ちょいちょい歌子のところへ遊びに出かけるようにするがよい」
全く、見ちがえるようにいきいきしたお高になって、帰って来ていた。このころできた、口のまわりの小さな悲しい皺が消えて、眼が、敏活にきらめいていた。繊細な蒼白い顔に、血のいろがうかんでいた。
「歌子様は、ほんとに面白い方でございます。あしたも、夕御飯におよびくださいましたが――」
「そうか。それは行かねばならぬ。ぜひ行きなさい」
若松屋惣七は、従妹とお高が親しくなりそうなのをよろこんで、珍しく上機嫌だった。
四
あくる日、歌子の家の夕飯から帰って来ると、お高は興奮を隠して考えこんでいた。眼をかがやかして、家じゅう歩きまわった。下男部屋へ顔を出して、佐吉や国平や滝蔵などと二こと三こと話し合っては、けたたましい笑い声をたてた。そこへ、若松屋惣七が自分で呼びに来て、お高を奥へつれて行った。長い廊下を惣七に
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