こち打ってまわったり、ものまねのようなことをしてみたり――」
「だが、今は芸人じゃあるめえ」
「こういうわけなの。お父つぁんは、何かあたいが悪いことをしてるように考えてるから、話しにくくってしようがないけど、べつにわるいことをしてるわけじゃあないんだよ。早くいえば、こうなのさ。あの磯屋の旦那の五兵衛さんて人に見込まれてねえ、ちょっと助《す》けに行ってあげているんだよ」
 暗いので、よく見えないのだが、久助は、お駒ちゃんの顔に眼をすえているらしかった。
「見込まれたって、おめえのどこがそんなにいいのかおれにあさっぱりわからねえ。顔かい」
「顔もいいけれど、からだがいいんだって」
「へっ、あきれたことをぬかすやつだ。恥を知るがいいや」
 ほんとにあきれ返ったように、久助が吐き出すようにいうと、お駒ちゃんはげらげら笑い出して、
「妙な感違いをしないでおくれよ。からだといったって容子《ようす》がいいっていうまでのことさ。ほんとに、お前は話がわからないから、いやになっちまうよ」
「いま何をしているかって、それを聞いているんじゃあねえか」
「だから話しているんじゃないか、へんないきさつがあってねえ、でも、心配おしでないよ。悪いことじゃないんだから。あたいはいま磯屋の人間さ」
「ふん、妹でもねえものが、妹という触れ込みでな。これはいってえどういうわけだ」
「それはね」と、お駒ちゃんはごまかすように、「商売上、そうしておかないとぐあいのわるいことがあるからさ」
「てえげえ察しがつかあ。おいらの主人のおせい様をだまそうてんだろう。磯屋の旦那はおせい様といっしょになるんだってえじゃあねえか」
「そうだとさ」
 お駒ちゃんはためらって答えた。
「そうだとさって、よく知らねえのか」
「よくは知らないやね。人のことだもの」
 お駒ちゃんがいやな顔をすると、久助は、せせら笑いながら突っこんだ。
「人のことって、兄貴のことじゃあねえか。それあそうと、おめえが磯屋さんの妹ってえのが、おれにあまだ腑《ふ》に落ちねえ」
「いいじゃないか。そんなことうるさくきかなくったって。おせい様は、呉服太物の商売には、流行《はやり》の色や柄を見る、女の眼が光っていないと、安心しないんだとさ。だから、磯屋さんは、そんなことに眼のきく妹があるっていってしまったの。だから、あたいがちょっと頼まれてその妹になっているのさ。
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