ざいます」
「あんたは、あの男と、何か特別の関係ででもあるのかな」
「いいえ、そんなことはございません」
「そうか。そんならよいが――」
「あの人はいままた、そのおせい様から、お金をまき上げようとしているのでございます。おおかた、お金をまき上げたうえで、すてるのでございましょう」
「もとより、そうにきまっておる」
「それを、知っていて、黙って見ているよりほかしかたがないのでございます」
「わたしは、強いことは相当強いつもりだが、簡単な男である。話してくれぬことは、わからぬ」
「はい。いずれ、すっかりお話し申し上げますでござります」
四
若松屋惣七の居間で、人をよぶ惣七の声がしていた。彼は、いつのまにか起きて、寝間を出て、奥の茶室兼帳場へ来ていた。お高は、いそいそとはいって行って、手をついた。若松屋惣七は、かすんでいる眼を、お高へ向けた。
「お高か」
「はい。高でございます。久しくお眼にかかりませんでございました」
若松屋惣七は、庭の老梅の幹のような、ほそ長い、枯れた顔を、まっすぐに立てて、きちんと端坐《たんざ》していた。いらいらして、膝をふっていた。膝のまえに、何やら書類のようなものが、四、五枚ちらばっていた。
「泊まり客があるそうだが――」
「旅のおさむらい様でございます。きのうお見えになって、そのままお泊まりになったのでございます。江戸の人をさがすにつけて、旦那さまのお力を借りたいとかおっしゃってでございましたが、磯五さんがわたくしに用があるといって、金剛寺まで呼び出して話をしているところへ来なすって、磯五さんを見ると、それが、その、捜していらっしゃる当の相手でございました。お強そうな、お立派なお武家さまでございます」
お高は、簡単に、いま聞いた、龍造寺主計が磯五をねらって出府したわけを、若松屋惣七に話した。
若松屋惣七は、眉間《みけん》の傷痕《きずあと》をふかくして、顔をしかめた。
「いずれ、そういうことであろうと、思っておりました。お前の良人――とは呼びとうない。磯五だ。磯五とは、ゆうべおそく、拝領町屋のおせい様の家で会いましたが、じつにどうも唾棄《だき》すべき人間である」
「はい。それははじめからわかっておりますことでございますが」いいかけて、お高は、はっとした。「すると旦那様は、おせい様があわててお取り立てをおはじめなすったうらに
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