。火もちがちがいますからねえ」
「火もちがちがいますよ」
「粉炭は、便利ですから、いつもの笊《ざる》へあつめといてくださいよ」
「こな炭は、便利でさ」
 炭屋の若い者は、おなじことを繰りかえしていった。お高は、笑いながら、[#「笑いながら、」は底本では「笑いなが、ら」]家のなかへはいった。ちょっと自分の部屋へ寄って、顔をなおしてから、客が待っているという、中の間の座敷へ行った。そこは、先日、磯五がはじめてあらわれて、このごろのさわぎの発端となった、あの座敷だった。
 お高が、縁側を進んで行って、敷居ぎわに手をつくと、そっちへ足を向けて、大の字なりに寝ころんでいた男が、むっくり起き上がって、あぐらをかいた。それは、龍造寺主計《りゅうぞうじかずえ》であった。
 お高は、びっくりした。龍造寺主計も、不意に現われたお高を、まぶしそうにながめて、つづけさまに、眼《ま》ばたきをした。伸びをした。
「つい眠《ね》たものとみえます。御主人が、おかえりになったのですか」
「いいえ、若松屋さまは、まだおかえりになりませんでございますけれど、御用は、わたくしが、伺っておきますように、しじゅういいつかっておりますでございます。わたくしも、ちょっと他行《たぎょう》をいたしまして、ただいま戻りましたところでございます。失礼をいたしました」
 いいながら、お高は、龍造寺主計を観察した。龍造寺主計は、笠《かさ》と草鞋《わらじ》をとっただけで、旅装束のままである。はだしの指のあいだに、土のような真っ黒なごみがたまっているのが見える。枕《まくら》にしていたらしく、おかしいほど長い、無反《むそ》りの刀が、あたまのほうに置いてあるのだ。汗と陽のにおいが、お高の鼻へただよってくるような気がした。
 お高が、江戸で見慣れている武士とは、全然違った型なのだ。陽にやけた顔に、あばたがいっぱい浮き出ているのだが、お高は、何だか、男らしい立派な人だと思った。
 先方が口を切るのを、お高は待った。龍造寺主計が、いい出していた。ふとい短い頸《くび》から、うがいをするように出てくる声だ。
「留守に上がりこんで、すみませぬ。先ほど江戸へ着いたばかりだ。さっそく若松屋惣七どのにお眼にかかりたいと存じて、推参いたした」
「あの、旦那さまのおしりあいの方でいらっしゃいましょうか」
「あんたは、こちらのお内儀かな?」
 お高は、あか
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