が、誰か顔のひろい人はないかときくので、おどろいていた。
龍造寺主計という人は、こんなふうに、人を驚かしてばかりいるのだ。だから、人がおどろくのには、平気なのだ。
立ちどまったついでに、ぽんぽんからだの塵埃《ごみ》をはたきながら、
「貴様は、物|識《し》りらしい面《つら》をしておるからきくのだ。江戸において交際《つきあい》のひろい人物がひとり、至急に入要である。名をいえ」
茶店のおやじは、困ってしまった。きちがいかもしれないと思ったので、さからわないに限ると思った。
「物識りらしい面とは、こんな面がお眼にとまって恐れ入りましてございます。しかしお武家さま、江戸で、顔の広いお方と申しましても、どういうお方でございましょうか。侠客《おとこだて》の衆のようなお方でございましょうか」
「いや。町人仲間で、顔の売れている人物のところへたよって行きたいのだ」
「それはそれは。して、どのような御用でございましょうか、それによりましては、このおやじめが、どなたか思い出さないとも限りませんで、へえ。なにぶん、この掛け茶屋などと申す稼業《しょうばい》は、人の口が多うございまして、いろいろとまた、なが年小耳にはさんでおりまするで」
「よく申した。ぜひ一人思い出してくれい。用というのは、その人物を伝手《つて》にいたして、江戸で尋ね人をしようというのだ」
ははあ、仇敵討《かたきう》ちかな、とおやじは思ったが、あまり立ち入ったことをいうと、危険なような気がしたので、黙っていた。それに、かたきうちにしては、相手のようすに、どことなくのんきすぎるところが見えるのだ。
しかし、若いころから、仇敵をさがして全国を放浪して、山河のほこりにまみれて、もうどうでもよくなって、こうして江戸へはいって、申しわけに、その顔のひろい人に頼んで捜してもらいながら、自分は、こづかい銭をもらって、一生ぶらぶら遊ぼうという肚《はら》かもしれない。よくあるやつだ。じっさい、この香具師《やし》のように陽に焼けて、悪ずれのしたように見える、龍造寺主計には、そんなようなところが、見えるのだ。
おやじは、めったなところを教えては、迷惑をかけるかもしれないと思った。
「はい。人をおさがしなさる。そのお人は、どういうお方でございましょうか」
「よく、いろんなことをきくやつだな。まず、蠅《はえ》だ。蠅のようなやつだ」
「あの、
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