いって具足屋が芽を吹くことがあればと、見込みがあるつもりでしたことなのだ。慾《よく》と二人づれで、やったことなのだ。うふふ、侠気《おとこぎ》だの、義理だのという、そんな洒落《しゃら》くさいものではない、ははははは」
「で、その借財《かり》のほうは、どうなすったのでござります」
「いま具足屋を人手に渡したくない。しばらく立て直して、もちこたえてみたいと思ったから、すっかりわたしが払ったのだ。この弁金と、いま話した東兵衛の女房へやった、東兵衛の出した資本《もとで》の分と、この二くちの金に困ってな、金のことをまかせられているある後家さんから、話しあいで、一時の融通を受けたのだ。
それも、それだけのものをまとめて借りたのではない。その女から預かって、わしの眼きき一つで、あちこちに動かしてある金を、その女の許しを得て、一時わしの手にあつめて、具足屋のほうへまわさせてもらったのだ。一年後に、わしがほかへ小分けしておいたと同じ利分をつけて、耳をそろえて、その女に見せるという約束だった」
滝蔵が、おそくなったいいわけをしながら、灯のはいった行燈《あんどん》を持って来て、ほどよいところへおいて、さがって行った。お高は、下男がいるあいだ、惣七から離れていた。雨戸のそとは、はたして、叫ぶ風と狂う雨とのあらしだった。樹々《きぎ》のうなりが、ものすごく聞こえてきていた。
お高は、惣七の肩にじぶんの肩をあたえて、不釣り合いに大きく見える自分の膝の上で、惣七の指をもてあそんでいた。惣七は、それにまかせていた。考えていることのために、気がつかないふうだ。
「ずいぶんわたくしにお隠しなすっていろいろなことをしておいででございます。いつのまに、そんなことをなさるのやら――お出かけなすったことも、それらしい用事の人が、みえたようすもございませんのに」
お高は、不服そうだ。
「ははは、まだお前の知らんことは、ほかにいくらもあるのだ」
「まあ、憎らしい」
「下らぬことをいわずに、聞け」
「はい」
「そういう約束である。一年のうちには、具足屋も、何とかもうけをみるであろう。また、いくらかでも稼業《かぎょう》が立ちなおってきたら、根こそぎ手放してもよいのだ。こう思って、その後家さんの金の中から入要《いりよう》な分だけ借りておいたのだ。
先方にしてみれば、若松屋というものにまかせてある以上それをこっちが
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