口笛を吹く武士
林不忘

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)師走《しわす》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)風声|鶴唳《かくれい》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「てへん+劣」、第3水準1−84−77]
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   無双連子

      一

「ちょっと密談――こっちへ寄ってくれ。」
 上野介護衛のために、この吉良の邸へ派遣されて来ている縁辺上杉家の付家老、小林平八郎だ。
 呼びにやった同じく上杉家付人、目付役、清水一角が、ぬっとはいってくるのを見上げて、書きものをしていた経机を、膝から抜くようにして、わきへ置いた。
「相当冷えるのう、きょうは。」
「は。何といっても、師走《しわす》ですからな、もう。」
 小林が、手をかざしていた火桶を押しやると、一角は、それを奪うように、抱きこんですわった。
「用というのは、どういう――。」
 上杉家から多勢来ている付け人のなかで、この二人は、よく気が合っていた。身分の高下を無視して、
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