も然りとなす。しこうして清国はこの間に立ちて独り漁夫の利を占めつつあるなり。」――とこう言うんだが、この新聞は社会党の機関紙だ。社会党のやつらまで、急にこんなに関心を持ち出したところを見ると、やっぱり噂どおり、伊藤とココフツォフはハルビンで会うことに確定してるんだな。
李剛 (まだ探しながら)そんなことより、こっちは植え疱瘡《ぼうそう》の通知書だ。近いうちに、市の医者がこの近所へ出張して来て、種痘をすると言って来たから、その期日をだしておかなくちゃあ――未来の労働者と兵隊がみんな疱瘡に罹《かか》って死んでしまったら、プリンス伊藤もココフツォフも困るだろう。
柳麗玉 あ、これじゃありませんか。何だろうと思って、今も見ていたんですけれど、気がつきませんでした。
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と自分の卓子の上から青い紙片を取って李剛に渡す。李剛は中央の大机に帰って、通知書を参考しながら原稿を書き出す。同志一と二があわただしく駈け上って来て扉《ドア》から顔を出す。
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同志一 安重根さんは来ていませんか。
同志二 たしかに今朝ウラジオへ着い
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